スラムドッグ$ミリオネア

公式サイト⇒http://slumdog.gyao.jp/

感想としては、「たくましい生命力にあふれた疾走する映画」でした。
ストーリーとしては、インドのスラム街出身で無学の青年主人公のジャマールは、「クイズ$ミリオネア」のテレビ番組で最終問題までたどりついたが、そこで不正を疑われてしまい・・・というお話。
基本的なストーリーは、クイズ$ミリオネアに参加しクイズに答える場面、クイズの不正を警察から問いつめられる場面、クイズに答えれるようになったジャマールの幼少からの半生、この3つのストーリーが絡み合って進んでいきます。
このストーリーの根幹となるクイズ$ミリオネアは、日本だとみのさんの司会でも有名ですが。世界的にみても、Who Wants to Be a Millionaire?というイギリスの番組のフォーマットが日本やアメリカを始め、各国100カ国以上に販売されています。なので、全世界の大体の人が、このクイズ番組の概要が4択であるとか、テレフォンといったライフラインを使用できるという共通認識を持っているという点に目を付けたのが素晴らしいですね。

あと、なんといっても良かったのが、主人公のジャマールの少年時代。スラムでのたくましい生活、盗みをし、嘘のガイド役を行うというとんでもない生活ではあるけど、今日を生き抜くために主人公達は強かに駆け抜けていく。その姿と疾走感、インドの美しい風景、そして汚れているはずのスラムさえ生命感にあふれている様子がとても良かったです。子役の3人の演技も自然で非常に良かったです。(某20世紀少年の映画は、少年時代の演技をなんとかしてほしいと思っただけに)

もちろん、その疾走感の裏側には、貧困問題であるとか、ヒンズー教イスラム教の宗教対立であるとか、売春や、子供の労働といった深い現実的な問題点は提起されているけれども。あくまで、この映画は、主人公のジャマールが少女の時から好きだったラティカを追い続けた純愛物語が背骨となっています。なので、正直にいうと主人公の切り開いていく状況というのは、一言で言えばありえない。ありえないのだけども、ジャマールの行動力には、もしかしたら運もついていくのではないかと思わせるものがあります。諦めずに行動するもののみが、運命という名の幸運をつかめるのかもしれないと感じさせると同時に、運がなかった事によって視力を奪われてしまった少年といった苦々しさのあるキャラクターも登場しているのがこの映画の特徴だと思います。ラストの主人公の結果も、その後を考えると必ずしもハッピーエンドではなく、努力をしたから、成功したという単純なアメリカンドリームではない。そんな夢あふれるファンタジーな部分と現実味あふれる苦い部分の調和が絶妙でした。

それでも、最後はボリウッド*1式に、登場人物のダンスでしめるというのが、インドの明るい力強さのようで楽しかったです。

*1:インド映画