リトル・ミス・サンシャイン

「他人から、なんか面白い映画ないと聞かれたら、おそらくフラガールがお勧めと答えるが。名作や傑作とまでは言えないが、それでも個人的には、このリトル・ミス・サンシャインの方が好き。」
物語は、ゲイである伯父のフランク(スティーヴ・カレル)が失恋のあまり自殺未遂を起こし、病院に迎えに行く所から始まる。フランクは、妹のシェリル(トニ・コレット)の家に招かれる。
そこには、独自の成功論を唱える家長のリチャード(グレッグ・キニア)、空軍のパイロットになるのを目標に、ニーチェのように無言の誓いをたてている息子のドウェーン(ポール・ダノ)、ヘロイン中毒で問題行動を起こすため老人ホームからたたき出された祖父のグランパ、そして家族の中心となっている美少女コンテストで優勝を夢見る9歳の娘のオリーヴ(アビゲイル・ブレスリン)という、個性的ではあるが、まとまりのない家族は空中分解寸前。
そこに一本の電話がかかる。オリーヴが、ミスコンテンストに繰り上げで参加が決定したのだ。しかし、家族全員でコンテスト会場のカリフォルニアまで飛行機でいく経済的余裕はない。一家全員で黄色のおんぼろミニバスにのり、コンテスト会場に向けて出発した。

形式としては、ファミリーのコメディを下敷きとした、ロードムービーです。車に乗って移動してるだけだから、なんでもないような日常的な会話が繰り広げられるのですが、それだけで結構引き込まれてしまった。むろん途中でドラマやトラブルが発生したりして、それが程よいアクセントになってるんですね。ただ、コメディ部分は大笑いというより、フフと微笑むような感じですし、なんでこのシーンをやたら長く撮るのかなという疑問が出てきたりする所もあります。いわゆるジェットコースターのようなテンポのよさでなく、自転車に乗ってるようなゆったりしたテンポです。(脱力系とでもいうのかな?)キャラクターでは、グランパのぶっ飛び具合が面白かった。ドウェーンに女を山ほど抱けとアドバイスしたり、フランクにポルノ雑誌を買いに行かせたりと、本能に忠実というか粗野ではあるのだけど、ギリギリ下品になってないバランスがすばらしい。そしてグランパは、コンテストに落ちたら私負け組と不安がる孫娘のオリーヴに対して「負け組とは、負けるのを恐れて戦わないのが負け組なんだ。」と諭す部分は、ジーンときた。
そしてラストシーン。まぁネタバレになるんで詳しくは、書けませんが、ここのダンスの部分は、笑って笑って泣いてでしたね。中々笑い泣きできるシーンってのはないですよ。そしてこの際にとった家族の行動は、決して褒められるような素晴らしい行動ではなく、どちらかといえば社会的には、はた迷惑な行動だと思うけど、それでも家族ってのは、ああいう行動がとれなきゃ駄目だろうと思えるようなシーンでした。

丁寧に作られた佳作と認定します。過剰な期待をしないで見たら必ず楽しめるんじゃないでしょうか。映画館で観たかったなぁ〜。