恋愛睡眠のすすめ

フランス女優といえばと問われたら、エマニュエル・ベアールや、オドレイ・トトゥイザベル・アジャーニソフィー・マルソーではなくて、シャルロット・ゲンズブールを挙げます。あのアンニュイな雰囲気や透明感がいいんですよね。
という事で、シャルロット・ゲンズブールがヒロインのファンタジックな恋愛映画、恋愛睡眠のすすめを観てみた。
感想は、「お洒落でポップな夢と切ない現実の境があいまいになった、まるで胡蝶の夢のようなお話。」でした。うん、これじゃ何を言いたいんだか、分かんないよね。でも、映画のストーリーもまとまってはないんですよね、ミシェル・ゴンドリー監督の頭の中を映像化したという感じで、夢のように話には、脈絡はなかったりするし。あぁ、北野たけし監督のTAKESHIS'に骨格は似てるかも。
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ストーリーは、主人公のステファン(ガエル・ガルシア・ベルナル)は、父の死をきっかけに、メキシコから母のいるフランスに引っ越す。だが、イラストレーターとして入社したと思った会社では、単純作業のつまらないカレンダーばかりを作らされるし、イラストレーターとしての才能は否定される。そんな時、アパートの部屋の隣に、素敵な女性ステファニー(シャルロット・ゲンズブール)が引っ越してきた。ステファンは、ステファニーを好きになるが、現実では、その熱意は空回りしてうまくいかない。だけど、夜眠った際にみる夢では、ステファニーとの恋愛は完璧に推移していく。次第に、現実と夢との認識があいまいになっていき・・・

少年のような心をもった人というのは、魅力的なのだけれども。少年のままの大人は、迷惑な存在なのでしょう。ステファンは、まさしく少年のままの大人。単純作業に数日で耐えきれなくなり、会社を遅刻や無断欠勤をするわ。妄想満載の手紙をステファニーに送ったり。ステファニーの持っていた馬のおもちゃを、こっそりと直して喜ばせようとして、留守中部屋の中に不法侵入したりする。キャラクターとして、恋愛映画的にギリギリ保っているのは、ガエル・ガルシア・ベルナルの魅力でキュートに感じたからでしょう。ガエルは、バベルに出てた時は、メキシコ人のラテンな感じだったのに、今作では上手くナイーブさを演じてた。また、ガエルは着ぐるみが似合ったりするし、なんかズルイ(?)。きっとステファンを、ジム・キャリーがニヤリと笑いながら、演じたら全然違う話(ホラーかな)になったと思います。
だけど、なんかステファンを憎めないのは、自分の中にもステファン的要素があったから。僕と喋る時は笑顔が多いから、きっと僕に気があるに違いないといった自意識過剰ぶりとか、(何にも行動してないのに)こんなにもあの子の事が好きなんだから、きっと振り向いてくれるはずという精神性を優先した考え方とか、他の男と楽しそうに話しているのを見るだけで、そうだよな僕の好きなあの子の魅力に皆が気がつかない訳ないんだ、それに比べて僕なんかという嫉妬と卑下のごちゃまぜになったような感情を、持った事はないだろうか。俺はある。

映画的には、ストーリーよりも映像に主眼が、置かれていて。特にステファンの見る夢は、綿の雲、セロファンの海、段ボールで出来た町並みやテレビセットがあり、それらは手作り感にあふれ、温かみのあるとキュートさです。そして夢だから場面転換も唐突で脈絡はないのでスピード感があり、見てて楽しいです。この辺りの手法は、音楽のプロモーションビデオ風ですね。元々ミシェル・ゴンドリー監督は、プロモーションビデオ出身だから得意とする部分なのでしょう。

結局どうなったのかとかストーリーを重視する人は、気に入らないでしょうが。
不思議な魅力にあふれ、余韻の残る映画でした。