たそがれ清兵衛

たそがれ清兵衛 [DVD]

たそがれ清兵衛 [DVD]

なんとなく時代劇をみたくて、評判が良かったにも関わらず、見逃していた、たそがれ清兵衛を借りてみた。
感想ですが、「地に足ついたリアルさと、日本人的美意識が強く表現されていた良作。」でした。

時代は、幕末。庄内地方にあるという海坂藩という架空の藩の下級武士、井口清兵衛(真田広之)が主人公です。この主人公は、痴呆症の母親と幼い2人の娘のために、夕方仕事を終えると、まっすぐに家に帰り、家事や内職にはげんでいた。また、妻は労咳のために死去しており、かかった薬代や葬式代の借金のため、家計は苦しかった。
そのため、口さがのない同僚からは、たそがれ時に帰る清兵衛、たそがれ清兵衛と揶揄されていた。

そのような暮らしの中、月代の毛がのび、ぼろぼろの着物に穴の空いた足袋を履いていようとも、今の暮らしを、惨めに思わず、誇りを失わず不器用ではあるけれども、芯の通った生き様をみせます。
そしてまた、その生活感が質素なんですな、これが。食事の場面なんかも、丁寧に描かれていてとても生活感を感じ取れます。
この辺り、藩を会社にして現代のサラリーマンに置き換える事もできて、共感できる作りとなっています。

そして、幼なじみではあるが、いいところのお嬢さんだった朋江(宮沢りえ)が、登場します。
朋江は夫の酒乱が原因で実家に帰ってきていて、暇だからと井口宅に立ち寄るようになったのですが。
朋江がくると、じみーだった井口家がパッと華やいだ雰囲気になるんですね、この辺り宮沢りえさんは華があるなぁと感心しました。

たそがれ清兵衛が地味なだけの存在でないのは、小太刀の名手という部分。決闘を申し込んできた相手を木刀で撃退するのですが、清兵衛は、その事を周りに言い触らすなという部分は、日本的ヒーロー像ですよね。強いんだけど、その強さを顕示しない謙虚さというか。
そして殺陣の部分は、ロングショットで撮られていたのも、珍しくて面白かったです。時代劇だと大抵、迫力を増すために、アップにしたりする事多いですから。とはいえ、ロングショットで絵になるのは、真田広之さんの動きが良かったからだと思いますが。

あと、余五善右衛門役を演じた田中泯さんは、迫力ありましたね〜。

いわゆる藤沢三部作といわれる「隠し剣 鬼の爪」や「武士の一分」もみたくなりました。