ヒトラーの贋札

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「肝の冷えるような圧迫感、緊迫感が絶えず漂うサスペンスにあふれた戦争映画」引き込まれて観た映画でした。

舞台は、第二次世界大戦中のドイツ、ザクセンハウゼン強制収容所ナチスは、そこにユダヤ人技術者を集め、敵国イギリスやアメリカに経済的打撃を与えるため、贋ポンド札、贋ドル札を作る作戦が開始された。
そこに、主人公の世界的贋作者のサロモン・ソロヴィッチ(カール・マルコヴィクス)も強制的に参加させられる。
いわゆるベルンハルト作戦という史実に基づいたフィクションです。

収容所は、看守がユダヤ人を撲殺しても、看守たちは、にやにや笑っているという劣悪な環境。薬が欲しいといったら、病気の感染が広がるからと殺されてしまうという状況。そこでは、人の命が軽く扱われていて、それが全体的な緊迫感を感じる要因になっていました。

そして、何よりこの作戦は、贋札作りを拒めば処刑、また贋札作りが成功すれば、それはナチスドイツが力をつける事となり、自分たちや同胞を危機に陥れる事となる。例え完成させても極秘作戦のため、情報漏洩防止のため皆殺しにされるであろう予感。そのようなアンビバレンツな状況。
リアリストのサロモンは生きるために、こびへつらい、また強かに、仲間をかばいながら贋札を作る事を選択して今日一日を生き延びていく。
そこに、ナチスのためになる作業はしないと命を賭してサボタージュを続ける理想主義者のアドルフや、それをナチス側に売り渡そうとする者など、様々な困難が襲いかかる。
自分がその立場になった場合、贋札を作るのかそれとも、死んでもそれに与しないのか、どうするべきなのかを考えたが、結論はでなかった。

映画の中で特に印象的だったのが、卓球台で遊んでいる場面でした。遊んでいる最中、塀1枚隔てた向こう側では、他のユダヤ人が、銃殺されている音が聞こえた。
贋札作りに関わる彼らは、優遇されていたため十分な食事、柔らかなベッドが支給されていた。そして今また、ナチスに貢献した褒美で、卓球台が支給された。同胞に対する裏切り行為の結果で得た褒美なのだ。そうしなければ自分自身が殺されていたかもしれなかったのだが、そのジレンマに苦しむ部分は、思わず僕もうめき声が出た。

機会があったら見て欲しいなと思う映画でした。