人はなぜ簡単に騙されるのか

人はなぜ簡単に騙されるのか (新潮新書)

人はなぜ簡単に騙されるのか (新潮新書)

プロの有名クロースアップ・マジシャン(テレビでよく見る訳ではないので知らない人も多いかもしれないけど、手品かじった事のある人なら誰でも知ってるとは思う。)、ゆうきともさんが書かれた「騙し」というキーワードについての考察です。
もちろんマジシャンですから、マジックと言う芸能を通じたトリックと騙しと人間の心理への観察の考察が中心となっています。

テレビのニュースや、または新聞の記事を見ると、騙される人の事件は後を立たない。詐欺事件や、マルチ商法とかオレオレ詐欺とか。それを見て、こう思った事はないでしょううか。普通さぁ、そんな単純な方法で、怪しそうなのに騙されるか?と。
でも、人は条件さえそろえば、簡単に騙されるものだとオイラは思います。マジックにおいても、いわゆるタネ、トリック部分というのは、知ってしまえば「な〜んだ」と言われるような事も多いんですよ。そういえば、映画「プレステージ」でもクリスチャンベール演じるマジシャンが、弾丸つかみのマジックを行った際、どうやってやったの?と興味津々だった妻が、タネを明かされて、「分かるとつまらないものね」と興味を失うというのは、象徴的だなぁと思いましたね。
話を戻すと、この本においては、この幼稚で、単純だけでも画期的なアイデアのトリックを、どうやってキレイに騙せるようにするのかという手段や手法が解説されています。それは、思い違いを誘導する巧みな話術だったり、TPOにそった演出、感覚では認知されているけど心理的に見えない動作を作り出す事だったり。

この本を読んだらといって、詐欺に引っかからない方法が身に付く訳ではありませんし、またマジックが身に付いたりする訳ではありません。
が、騙すというのは、どのような構造をとるのか知ってみたい人、または私は簡単に騙されないと思っている人が読んでみたら面白いのかと思います。
ただ、個々のエピソードは面白いものの、全体を通じて、はっきりとした結論が提示されないので、すっきり感はないかも。本を読んで、あぁ、なるほどと納得したい人用ではなく、本を題材に自分で色々考えたい人用というべきですかね。