オーデュボンの祈り

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

最近は、今まで読み慣れた作家さんでなく、新しい作家さんの作品を読んでみようキャンペーンを自分の中で開催中。
という訳で、結構評価する人の多い、伊坂幸太郎氏の作品を手に取ってみました。

さて、この作品の感想としましては。ちょっと不思議な世界を舞台にしているのに、そこに住まうキャラクターは地に足のついた現代的な考え方をする人物造形というアンバランスな面白さを感じましたし。何より圧巻だったのは、クライマックスに向けて全ての伏線が回収されていく気持ち良さが見事でしたね。なんというか、ジグソーパズルでピタッピタッとピースがはめ込まれていく、そんな快感に似た物を感じました。

あらすじは、コンビニ強盗に失敗し、逃走した主人公伊藤は、気付くと見知らぬ島で目を覚ました。そこは、江戸時代以降外界から遮断された島、「荻島」だった。そこに住んでいる人間は、嘘しか言わない画家、太り過ぎて動けなくなった女性、島の住民に殺人を許されている男など奇妙な人間ばかり。何より奇妙なのは、その島には、言葉を話し、未来が見えるカカシがいる事だろう。そう、あの田んぼに突っ立っているカカシが喋り、未来が見える、その力で島民から頼りにされている。そして、伊藤が島を訪れた翌日、カカシは殺される。勿論物語的には、その犯人を探していく事になるのですけど。カカシを殺した（？）犯人を捜す。これで、どんな話になるのか、想像できます？荒唐無稽にしかなりそうにない設定なのに、きわめて面白く読みすすめる事ができました。
この感想で内容が気になった方は是非手に取って読んでみてください。ミステリーを読まない人にもお勧めできる作品です。