バベル

公式サイト⇒http://babel.gyao.jp/
公開最終日に観にいきました。もう、ほとんど公開が終わってる時に感想を書くのもどうかとは思いますが、いい映画でしたので、書いておきます。


世界の各地、モロッコ、メキシコ、東京、アメリカの4つの地で、それぞれの物語が、かすかな繋がりや時間を接点にしながら、同時に進行していく映画でした。
で、いつものようにオイラの結論を先に、書くと。いい映画でしたし傑作だと思います。なんというか、心揺さぶられるような、余韻が長く続くような映画です。
ただし、ただしですね、じゃぁ、誰にでも勧めれるような映画かというと。うーん、と迷っちゃうような映画なんですね(笑)色々な物語が、やがて一本の線になって、見事なラストにつながるそんな映画では、ありません。全然違うので、そのような期待はしない方がいいです。
この映画は、ドラマッチクさというか、物語におけるカタルシスは、ほとんど放棄してるのですね。なので、泣けるような感動もないし、笑いもない、ほのぼの心温まる事もなく、観終わった際に話のオチがつく訳でなく、ただそこにある孤独感は、少しの希望は見られるものの、癒されず、事態はただ悪くなっただけで、ただ単にそこにあるという現実を切り取ったような結末がつきつけられます。
娯楽性があまりないが、心を鷲掴みにされるような純文学といった感じです。


この映画のテーマに、すごい惹かれました。
テーマは、題名のバベルが示しているように、言葉によるコミュニケーションの不全でしょう。旧約聖書に出てくるバベルの塔の話は、簡単に言うと古代都市バビロンで傲慢さゆえに天にまで届く塔を建てようとし、その傲慢さゆえの愚かさは、神の怒りをかい、神は、本来一つであった言語をバラバラにし互いに言葉を通じなくさせたという話です。
この映画は、それを様々な場面で突きつけられます。言葉が通じないという場面が。または、言葉が通じ合っても、自分の気持ちが、相手に理解されないという現実が。それは、同じ国民間であっても、夫婦の間でも、兄弟間でも、父と娘の間であったとしてもという事である。相手の孤独を癒せないし、気づくこともできないという突き放された現実が表現されます。
で、オイラもそれに、ウンウンと頷いてしまうのです。気持ちや考えというのは、ほとんど伝わらないという事に。勿論、相手の気持ちもオイラは、ほとんど汲み取っていないのでしょうが。

そして、テーマを体現したようなキャラクター、言葉が聞こえないろうあ者の女子高生役を演じた菊池凛子さんの演技も、演出の助けもあるかなぁとは思ったものの、素晴らしかったです。いや、外見からいうと、さすがに女子高生には見えなかったのですが。

娯楽性は少なく、重めの映画ですが、だからといってツマラナイ映画ではないと思います。