a lost article

出社途中の駅のホームでふと、携帯電話を持っていない事に気づく。ん?と思って、ポケットやカバンの中を探すが、出てこない。落ち着けと自分に言い聞かせ、現在から過去をビデオテープを巻き戻すように、遡ってみる。あっ、そうか、充電器の上に置いたままで、持ち出した記憶がないや。
こうなっては、しょうがない。今から取りに帰ると、遅刻するのは必至の時間帯なのである。まさか上司に携帯電話を取りに帰ったので遅れましたという言い訳をして、おぉ、そうかその理由なら、納得だなと言ってくれる訳がない。今日の仕事のスケジュールを思い浮かべ、外勤先で緊急の電話が鳴るような用件がないのを確認し、携帯電話をあきらめた。
そのまま一日を過ごした訳なのだが、株価のチェックをしたいなとか、Blogを見たいなとか、結構、携帯電話に依存している自分に気づく。そういやぁ、携帯電話が出始めの頃は、電話を持ち歩くなんて、縛られているみたいで、持ちたくないなんて言ってたのになと、一人苦笑した。
夜、家に帰ると、携帯電話はやはり、記憶どおり、充電器の上に乗ったままだった。「今日は、忘れてすまなかったな」と話しかけると、携帯電話は、「ちぇっ、俺がいなくて、不便だったろ!」と、ふて腐れた顔で喋った、ような気がした。