ゆれる

公式サイト⇒http://www.yureru.com/
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最初に結論から申しましょう。オイラはこの映画を劇場で観れて非常に幸せです。今の所、今年No.1の映画かな。観た後の余韻が心地よかったですね。
もし、あなたがハリウッド的な分かりやすい勧善懲悪な映画が好きというので、あれば、この映画はつまんねぇ映画と吐き捨ててしまうかもしれません。雰囲気的にはフランス映画でよくあるような人生の哲学や醜さを描くという文学的な香りのする作品です。ただし、途中は法廷劇という手法をとっているため、サスペンス仕立てにも仕上がっており、観るものを途中で飽きさせる事はなかったです。(ヨーロッパ映画でいかにも芸術作品でございといった作品とは趣を異にしています。)テーマや結論も最終的には観た人にゆだねるという手法をとっているため、観た人それぞれの解釈の仕方が出てくる作品だと思います。オイラも、まぁそれなりに映画を観るので、途中で、あ〜この人が助かって最終的にはハッピーエンドでめでたし、めでたしになるんだろうなぁ〜と、全体の話の流れ、終着点は予想できるのですが。この映画は、最後にどういう結末を持ってくるのかが、全然予想がつかず、だからこそ一言一句聞きのがせられない、演技を見過ごす事ができないと、のめり込んでいました。また、その期待に応えるように、役者の演技が素晴らしい!!通常、映画だと、あぁ〜この人はきっと、事務所とのバーター取引で出演が決まったんだろうなぁとか話題性かなというような人がいるもんですが。主演のオダギリジョーさん、香川照之さんの好演。特に香川さんがキレるシーンは圧巻の一言。それを蟹江敬三さんや、伊武雅刀さんのベテランが固め、キム兄の検事役やピエール瀧の刑事役も中々合ってました。

東京でカメラマンとして成功している猛(オダギリジョー)は母の一周忌で帰省する。彼は実家のガソリンスタンドを継いだ独身の兄の稔(香川照之)や、そこで働く幼なじみの智恵子(真木よう子)と再会し、3人で近くの渓谷に行くことにする。猛が単独行動している間に、稔と渓谷にかかる吊り橋の上にいた智恵子が転落する。

幼なじみの智恵子(真木よう子)は、高校生の頃、猛(オダギリジョー)の恋人だったが、東京についていく事はできず。現在は兄の稔(香川照之)が働くガソリンスタンドで働く日々、35歳の稔と29歳の智恵子、両者独身で田舎町の事、自然と周りも結婚を期待し、稔も智恵子に好意を抱いていた。おそらく稔に会わなければ、智恵子もそんな生活も悪くないと結婚したかもしれない。しかし東京から帰ってきた猛は、稔が好意を抱いている事を知りながらも智恵子を抱く。その翌日に3人で渓谷に行くのだが、猛に心引かれた智恵子は、吊り橋上で、稔に触らないでとはっきり拒絶し、転落してしまった。
この部分の演出とかは巧いなぁと。ゆれる吊り橋をスイスイと一人で向こう側に渡ってしまう猛。猛を追いかけようとした智恵子。吊り橋は危ないから向こう側に渡るのは、やめようよと提案し、智恵子を引き止めようとする稔。関係性や性格がよく現れたのではないかと。

都会に行って成功した弟と地元で家業を継いだ兄、普段であれば仲の良い兄弟だが、吊り橋での事件以降、徐々にその2人の間の信頼がゆれていきます。転落した智恵子においても、兄と弟の間をゆれていました。そして観客は事件の真実が分からず、また誰の言う事を信用すればいいのか分からず、ゆらされます。これらの本音と建前、真実と嘘、関係性や記憶をひたすら、ゆさぶられます。
最後まで、なんであんな行動をとるのだろう、その発言はどうして、その表情の意味はと考えたくなるような作品でした。そんな人間の奥深くにある感情について深く考えさせられるのが面白い映画でした。